技能実習生は残業できる?

技能実習生は残業できる?

はじめに

お金を稼ぐために残業を希望する技能実習生はとても多いです。面接時にも「残業はどのくらいありますか?」とよく質問されます。

結論をお伝えすると、技能実習生の残業は可能ですが、何の申請もなく残業をさせることは違法です。例えば本人の意思だとしても、法律に違反すると「実習実施者(受入企業)」に罰則が科せられます。

さらに、2024年4月11日には、技能実習制度運用要領が一部改正され、「人手不足を理由とした時間外労働等を技能実習生に行わせることは認められない」と明記されました。人手不足を理由とした残業は行えません。

この記事では、技能実習生の残業について説明いたします。

技能実習生の労働時間の上限は?

基本的に日本人と同じ

日本の労働基準法や最低賃金法、雇用保険法は、日本人と外国人を同じ条件で適用します。労働時間の上限も同様で、1日の労働時間は最大8時間、1週間では最大40時間と定められています。

労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を取る必要があります。例えば、午前8時に始業の場合は、1時間の休憩を含めて午後5時に終業する必要があります。

技能実習生が残業するには?

人手不足を理由とした残業は禁止

2024年4月、技能実習制度運用要領が一部改定され、「人手不足を理由とした時間外労働等を技能実習生に行わせることは認めらない」という一文が明記されました。

技能実習制度は、人手不足を解消する労働のための制度ではなく、「日本で培った技能や技術、知識を開発途上地域に移転し、そこでの経済発展に貢献する人材を育成すること」が目的です。原則として、時間外労働、休日労働、深夜労働は前提ではありません。

それに反して、違法な長時間労働や、不当に安い残業代、劣悪な労働環境が問題視される事態が発生しています。
当記事をお読みになっている皆様は、くれぐれもそのようなことがないようにお願いいたします。

残業には36協定が必要

やむを得ない事情がある場合、労働関係法令の範囲内で残業を課すことも可能です。残業を行うには、いわゆる「36協定」と呼ばれる協定を結ぶ必要があります。この協定は、労働基準法第36条に基づき、受入企業と労働者が締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります

残業時間には、通常の賃金の25%増しの割増賃金を支払う義務があります。この取り決めも日本人と同じ条件が適用されます。

しかし、法定内残業時間に関しては36協定の範囲外となります。

45時間/月以上の残業には、軽微変更届と理由書が必要

技能実習生の月間残業時間が45時間(1年単位の変形労働制を採用している企業の場合は42時間)を超えた場合、外国人技能実習機構に対して「軽微変更届」と「理由書」を提出する義務があります。

  • 軽微変更届

軽微変更届は、技能実習計画に変更が生じた際に提出する届出です。受入企業は、超過残業時間を集計し監理団体に報告し、監理団体が技能実習機構へ提出します。軽微変更届には、規定時間を超えたすべての技能実習生の残業時間を詳細に記載する必要があります。

  • 理由書

超過残業が発生した理由を外国人技能実習機構に対して説明するために、受入企業が作成して提出する必要があります。

技能実習生の残業時間が月間45時間(1年単位の変形労働制では42時間)を超えた場合、企業は毎月「軽微変更届」と「理由書」を提出する必要があります。これは1回だけの提出では済まないため、毎月の残業時間を継続的に確認しなければなりません。これらの届出を怠ると、状況に応じてペナルティが科される可能性があります。適切な管理と定期的な確認が重要です。

80時間/月以上の残業は禁止

技能実習法では、技能実習生の月間残業時間が80時間を超えることは認められていません。技能移転が主な目的であるため、過度な残業は制度の趣旨に反します。特別条項により「時間外労働+休日労働の合計100時間」が認められていても、技能実習生には適用されないのです。

特に年間2回以上の月80時間超えの残業が発生すると、企業は「技能実習生の受入停止処分」を受ける可能性があります。外国人技能実習機構が監査を行い、違反が見つかれば即座に処分が下されることもあります。

まとめ

技能実習生の残業時間管理は、企業の事業計画や実習生の生活に大きな影響を与える重要な事項です。法令を遵守し、健全な労働環境を提供することが、企業の責任であり、実習生の成功に繋がります。

まずは、従業員の労働時間をしっかりと管理しながら、適切な実習を実施させる必要があります。また、そもそも残業が発生しないように、業務の生産性を高める意識も重要です。

技能実習制度は、「育成就労」という人材育成、人材確保を目的とした新制度に変わりつつあります。残業に関する規制の動きは、今後も引き続き注視していく必要があるでしょう。

育成就労については以下の記事をご覧ください。

参考:技能実習制度廃止?育成就労制度とは?

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