技能実習生が妊娠したら?適切な対応は?
はじめに
受け入れた技能実習生が妊娠をした場合、あなたはどのように感じるでしょうか。
真っ先に「受け入れている実習生が妊娠したら、強制的に解雇できるのか?」と考えた方は、当記事をしっかり読み、人権について考えていただければ幸いです。不当な扱いが発覚した場合、新規の受け入れが停止されるリスクもあります。
法律の定め
妊娠に対する不当な扱いの問題
技能実習生が妊娠した場合、悪質な受入企業、監理団体、送出機関等が、中絶や帰国を不当に強要することがあります。
しかし、日本の法律では、妊娠を理由に技能実習生を解雇することは禁止されています。
男女雇用機会均等法は、日本で働く技能実習生も適用の対象となります。
法的保護と権利
妊娠した技能実習生には以下の権利が認められています。
- 【時間外労働、休日労働、深夜業の制限】
妊娠中及び出産後1年以内の女性は、時間外労働、休日労働、深夜業の免除を請求できます。変形労働時間制が取られる場合にも、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働しないことを請求できます。 - 【軽易業務転換】
妊娠中は、他の軽易な業務への転換を請求できます。 - 【産前休業】
出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、請求すれば取得できます。出産当日は産前休業に含まれます。 - 【産後休業】
出産日の翌日から8週間は、就業することができません。ただし、産後6週間を経過後に、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務には就業できます。 - 【解雇制限】
産前・産後休業の期間及びその後30日間の解雇は禁止されています。 - 【育児時間】
生後1年に達しない子を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分間の育児時間を請求できます。 - 【母性健康管理】
妊婦健診を受けるための時間を確保することを請求できます。妊婦健診を受け、医師等から指導を受けた場合は、指導事項を守ることができるよ
うにするための必要な措置を申出・請求できます。出産後1年以内の女性は、医師等から指示があったときは、健康診査等に必要な時間の確保を申し出ることができます。
参考:技能実習生手帳 妊娠・出産した場合に認められる主な権利
実習実施者の対応
事前周知
受入企業は、技能実習生の権利や適用制度を事前に理解し、入国後講習等で、妊娠・出産を理由とする解雇がないことを周知することが大切です。
合わせて相談窓口の情報も提供することで、技能実習生の安心につながるでしょう。
相談窓口 参考:
適切なサポート
技能実習生の妊娠が判明した場合、保健指導や生活状況の把握など積極的なサポートを行い、定期的な健康診断の受診を促すために労働時間を調整し、医療機関の指導を守ることが重要です。
- まずは、妊娠や出産を理由に解雇することはなく、技能実習を最後まで行えることを説明しましょう。
その上で、技能実習の継続意思や、出産場所の希望を確認してください。 - 技能実習生が帰国を希望する場合には、「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書を準備しつつ、実習再開時期や手続等について技能実習生に説明し、技能実習を期間満了まで円滑に行えるようにサポートしましょう。
- 技能実習生が実習終了を希望する場合は、技能実習生に負担させることはできません。
- 技能実習を中断又は中止することとなった場合には外国人技能実習機構に技能実習困難時届出書を提出してください。
監理団体もサポートを行いますが、一緒に働いている企業から話をすると、より理解が伝わり安心に繋がるでしょう。
詳しくは、出入国在留管理庁の下記リーフレットに目を通してください。
技能実習生本人の対応
妊娠した技能実習生は、日本人と同様に妊娠・出産の支援を受ける権利があります。まず、居住している市町村に妊娠の届出を行い、母子健康手帳や妊婦健康診査の補助券などを受け取りましょう。専門職員に妊娠や出産に関する相談も可能です。
定期的な妊婦健康診断を受け、各自治体の無料相談サービスや外国人生活支援の相談窓口を利用してサポートを受けましょう。
また、技能実習生は国民健康保険や受け入れ先の健康保険に加入しており、42万円の出産育児一時金を受け取ることができます。公的医療保険の制度を活用し、金銭的援助を把握しておくと良いでしょう。
ただし、母国を離れて暮らす実習生が、上記全てを本人だけで行うのは困難でしょう。企業や管理団体を含め、周りのサポートが重要になります。
詳しくは、出入国在留管理庁の下記リーフレットに目を通してください。
まとめ
日本では、技能実習生の妊娠や出産に関連するトラブルが増加していますが、事前に適切な対応を取ることでこれらを防ぐことができます。
受入企業は、技能実習生の妊娠や出産に関する権利や制度を理解し、適切な説明とサポートを提供することが重要です。定期的な面談や相談窓口の案内を通じて、技能実習生が安心して働ける環境を整えましょう。
どうか、技能実習生が妊娠した時には、「おめでとう」と声をかけましょう。