租税条約って?技能実習生は税金を払う?

租税条約って?技能実習生は税金を払う?

はじめに

結論からお伝えすると、日本で働く技能実習生も、他の労働者と同様に税金を支払う義務があります。しかし、技能実習生にとって日本の税制は馴染みがなく、時に混乱を招くことがあります。

この記事では、技能実習生がどの税金をいつ、どのように支払うべきか、租税条約による免除の可能性、そして3年目に特に注意が必要な税の支払いについて、具体的に解説します。

技能実習生も税金の支払いが必要です

技能実習生も、日本で働く限り、税金を支払う義務があります。日本では、1年以上の在留資格を持つ外国人は、日本人と同様に住民税の対象となります。

住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、来日1年目は課税されないことが一般的です。しかし、2年目以降、前年の所得に応じて住民税が発生します。技能実習生の場合、住民税は特別徴収方式で、所得税と同様に給与から天引きされます。1年目は所得税だけが天引きされますが、2年目からは住民税も加わるため、手取り額が減ることがあります。

住民税は、1月1日時点で住所があり、前年に一定額以上の所得がある場合に課されます。このため、例えば1月2日に転居しても、1月1日時点の居住地で住民税を支払うことになります。技能実習生も例外ではなく、前年度に所得があれば、住民税の支払いが必要です。

技能実習生への税金の説明方法は?

技能実習生に対して、日本の税制や税金の仕組みを適切に説明することが大切です。技能実習生の中には、稼いだ給料の多くを母国の家族への仕送りに充てるケースも少なくないです。特に住民税に関しては2年目以降に突然引かれるため、事前にその理由を理解させる必要があります。

また、税金の使い道についても説明をすると、技能実習生の納得につながります。特に公衆トイレや無料のトイレットペーパーは外国では当たり前ではないため、そういった身近なところにある税金の使い方を周知すると分かりやすいでしょう。

租税条約で技能実習生の税金が免除される?

覚えておいていただきたいのが、租税条約についてです。
技能実習生が日本で働く場合、母国と日本が締結している租税条約に基づき、特定の条件下で税が免除される場合があります。租税条約とは、二重課税を避けるための取り決めであり、技能実習生が母国でも日本でも税を支払わなければならないという状況を防ぐことができます。

締結国によって適用対象や条件は異なってきます。

  • 例・ベトナム:原則どおり課税
  • 例・インドネシア:年間 60 万円を超えないものは免税(5年間に限ります)

反対に、ミャンマーやカンボジア等の国は租税条約が締結されていません。

詳しくは外国人技能実習機構「税金の免除に関するお知らせ」国税庁「我が国の租税条約等の一覧」をご参考ください。

ただし、免除を受けるためには、租税条約に基づいた申請書類の提出が必要です。このプロセスを怠ると、本来免除されるべき税金を支払ってしまう可能性があるため、事前に必要な手続きを確認することが重要です。
必要な書類や提出先等の情報は、国税庁「租税条約に関する届出(教授等・留学生・事業等の修習者・交付金等の受領者の報酬・交付金等に対する所得税及び復興特別所得税の免除)」をご確認ください。

技能実習3年目の住民税に注意

技能実習生が帰国する際、住民税の支払いが重要です。住民税は前年の所得に対して課税されるため、帰国後も納税義務が残ります。このため、事前に適切な対応を行わないと、後から未納税が発覚し、問題を引き起こすことがあります。

企業や実習生ができる対策として、次の方法があります。

  • 一括徴収:退職時の給与や退職金から未納分を天引き。
  • 納税管理人の指定:日本にいる人を納税管理人にし、代理で納税してもらう。

これを忘れると、企業の評価に悪影響を及ぼし、制度の継続利用が難しくなる可能性があります。未納税の発生を防ぐためには、技能実習が終了する前に必ず住民税の処理を済ませておくべきです。

特に、技能実習3年間の蓄えを既に母国へ送金しているケースもあり、帰国直前に多額の住民税の支払いが求められると実習生が困る可能性があります。このため、早めの段階で住民税の支払い義務について実習生に伝え、適切な納税計画を立てることが重要です。

まとめ

技能実習生が日本で働く際、所得税と住民税の支払いが義務付けられており、税金の支払いタイミングや方法について理解しておくことが重要です。さらに、租税条約を活用することで、二重課税を回避できる可能性もあります。

これらのポイントを押さえて、適切に技能実習生に対して説明を行い、税金を管理しましょう。