【企業】優良な実習実施者とは?

【企業】優良な実習実施者とは?

はじめに

技能実習制度の期間を3年から5年に延ばすためには、技能実習3号の受け入れができるように「優良な実習実施者」として認定されることが必要です。

この「優良な実習実施者」とは何か、どのような基準で認定されるのか、そのメリットについて詳しく解説していきます。技能実習3号の受け入れを考えている企業や個人にとって、この情報は非常に重要です。この記事を通して、優良認定を目指すための具体的な要件や、そのためのポイントをしっかりと理解していきましょう。

実習実施者とは

外国人技能実習制度で「実習実施者」とは、技能実習を実施する個人や法人を指します。つまり、技能実習生を受け入れる企業や個人のことです。
実習実施者=受入企業と考えると分かりやすいでしょう。

優良な実習実施者とは

2017年11月に施行された新しい技能実習法により、優良な実習実施者の制度が設けられました。これは、技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)と監理団体が共に優良要件を満たすことで、技能実習3号の受け入れが可能になる仕組みです

優良認定を受けると、受け入れ可能な技能実習生の人数枠が増加し、実習期間が最長5年まで延長されるなどのメリットがあります。これは、技能実習生の質の向上と、より長期的な技術習得を促進するための措置です。

優良な実習実施者に認定されるメリット

メリットをそれぞれ詳しく説明していきます。

実習期間を3年から5年に延長可能

通常、企業は技能実習1号(1年目)から2号(2~3年目)までしか受け入れられず、実習期間は最長3年です。
しかし、優良認定を受けている場合は、技能実習3号(4~5年目)も受け入れることができ、実習期間を最長5年に延長できます。この2年間の延長は、長期間にわたって技能実習生を受け入れたい企業にとって大きな利点です。

ただし、技能実習3号を受け入れるためには、監理団体も優良認定を受けている一般監理事業である必要があります。さらに、3号に移行できる職種に該当しなければならないため、移行対象職種かどうかを確認することが重要です。

受け入れ人数枠の拡大

優良な実習実施者と監理団体の両方が認定を受けている場合、受け入れ人数枠が大幅に増加します。

具体的には、第1号および第2号技能実習生の受け入れ人数が基本枠の2倍になります。そして、第3号技能実習生の受け入れ人数は基本枠の3倍に増え、さらに他の実習実施者からの転籍も可能です。

例えば、常勤職員数が100人の企業の場合、基本受入れ枠は6人です。これが優良認定を受けると以下のようになります:

• 第1号技能実習生:12人

• 第2号技能実習生:24人

• 第3号技能実習生:36人

このように、基本受入れ枠が6人の場合、優良認定を受けると最大で72名の技能実習生を雇用できることになります。

この受け入れ枠の拡大は、企業にとって非常に大きなメリットとなります。多くの技能実習生を受け入れることで、より多くの人材を育成し、企業の生産性を向上させることができます。また、技能実習生にとっても、より多くの仲間と一緒に実習できる環境が整うため、相互に学び合い、技術を高める機会が増えます。

さらに、技能実習生が他の実習実施者から転籍できる制度により、技能実習生が新しい環境でスキルを磨くことも可能となり、柔軟な実習体制が整います。これにより、技能実習生が幅広い経験を積むことができ、より高度な技術を習得するための環境が整います。

優良な実習実施者の認定要件

以下の表で、6割以上の点数(150点満点で90点以上)を獲得した場合に、「優良」な実習実施者の基準に適合することになります。

①技能等の修得等に係る実績配点
Ⅰ 過去3年間の技能実習事業年度の基礎級程度の技能検定等の学科試験及び実技試験の合格率(旧制度の基礎2級程度の合格率を含む。)・95%以上:20 点
・80%以上 95%未満:10 点
・75%以上 80%未満:0 点
・75%未満:-20 点
Ⅱ 過去3年間の技能実習事業年度の2・3級程度の技能検定等の実技試験の合格率

<計算方法>
分母:新制度の技能実習生の 2 号・3 号修了者数
    -うちやむを得ない不受検者数
    +旧制度の技能実習生の受検者数

分子:(3 級合格者数+2 級合格者数×1.5)×1.2

* 旧制度の技能実習生の受検実績について、施行日以後の受検実績は必ず算入。
* 上記の計算式の分母の算入対象となる技能実習生がいない場合は、過去3技能実習事業年度には2号未修了であった者の申請日時点の3級程度の技能検定等の実技試験の合格実績に応じて、右欄のとおり加点する。
・80%以上:40 点
・70%以上 80%未満:30 点
・60%以上 70%未満:20 点
・50%以上 60%未満:0 点
・50%未満:-40 点

* 左欄に該当する場合
・合格者 3 人以上:20 点
・合格者 2 人:10 点
・合格者 1 人:5 点
・合格者 0 人:0 点
Ⅲ 直近過去3年間の2・3級程度の技能検定等の学科試験の合格実績

* 2級、3級で分けず、合格人数の合計で評価
・合格者 2 人以上:5 点
・合格者 1 人:3 点
Ⅳ 技能検定等の実施への協力

* 技能検定委員(技能検定における学科試験及び実技試験の問題の作成、採点、実施要領の作成や検定試験会場での指導監督などを職務として行う者)又は技能実習評価試験において技能検定委員に相当する者を社員等の中から輩出している場合や、実技試験の実施に必要とされる機材・設備等の貸与等を行っている場合を想定
・有:5 点
②技能実習を行わせる体制配点
Ⅰ 直近過去3年以内の技能実習指導員の「技能実習指導員講習」受講歴・全員有 : 5点
Ⅱ 直近過去3年以内の生活指導員の「生活指導員講習」受講歴・全員有 : 5点
③技能実習生の待遇配点
Ⅰ 第1号技能実習生の賃金(基本給)のうち最低のものと最低賃金の比較・115%以上 : 5点
・105%以上 115%未満: 3点
Ⅱ 技能実習生の賃金に係る技能実習の各段階ごとの昇給率・5%以上 : 5点
・3%以上5%未満: 3点
Ⅲ 技能実習生の住環境の向上に向けた取組有 : 5点
④ 法令違反・問題の発生状況配点
Ⅰ 直近過去3年以内に改善命令を受けたことがあること(旧制度の改善命令相当の行政指導を含む。)・改善未実施 :-50 点
・改善実施 : -30 点
Ⅱ 直近過去3年以内における失踪がゼロ又は失踪の割合が低いこと(旧制度を含む。)・ゼロ : 5点
・10%未満又は1人以下: 0 点
・20%未満又は2人以下:-5点
・20%以上又は3人以上:-10 点
Ⅲ 直近過去3年以内に責めによるべき失踪があること(旧制度を含む。)・該当 : -50 点
⑤相談・支援体制配点
Ⅰ 母国語相談・支援の実施方法・手順を定めたマニュアル等を策定し、関係職員に周知していること・有 : 5点
Ⅱ 受け入れた技能実習生について、全ての母国語で相談できる相談員を確保していること(旧制度を含む。)・有 : 5点
Ⅲ 直近過去3年以内に、技能実習の継続が困難となった技能実習生に引き続き技能実習を行う機会を与えるために当該技能実習生の受入れを行ったこと。・基本人数枠以上の受入れ : 25点
・基本人数枠未満の受入れ : 15点
Ⅳ 技能実習の継続が困難となった技能実習生(他の監理団体傘下の実習実施者で技能実習を行っていた者に限る。)に引き続き技能実習を行う機会を与えるため、実習先変更支援サイトに監理団体を通じて受入れ可能人数の登録を行っていること・有 : 10点
⑥地域社会との共生配点
Ⅰ 受け入れた技能実習生に対し、日本語の学習の支援を行っていること・有 : 4点
Ⅱ 地域社会との交流を行う機会をアレンジしていること・有 : 3点
Ⅲ 日本の文化を学ぶ機会をアレンジしていること・有 : 3点

配点には年度基準の項目があり、年度によって得点が異なることがあります。そのため、6割以上の点数に満たない場合もあります。

一度優良な実習実施者として認定されても、改善命令などで大きく点数が下がると、優良認定を失うことがあります。3号の技能実習生を継続して受け入れるためには、優良認定後も基準を満たし続けるように注意が必要です。

また、技能検定への合格や、技能実習指導員、生活指導員、失踪については、下記参考記事をご覧いただければ、それぞれ重要なポイントなどがお分かりになりやすいかと思いますので、ぜひご確認ください。

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まとめ

優良な実習実施者は、適切な教育・指導を行い、技能実習生の生活や労働環境を整えることが求められます。これにより、技能実習生が安心して技術を学べる環境が整い、母国での技術普及にも繋がります。企業側も、優良認定を受けることで企業の信頼性が高まり、国際的な技術協力の一翼を担うことができます。したがって、優良実習実施者の認定を目指すことは、技能実習生と企業双方にとって大きなメリットとなるのです。