建設業における技能実習生受け入れのメリットと課題
はじめに
建設業界は慢性的な人手不足に直面しており、特に高齢化の進行や若者の就業意欲の低下により、労働力の確保が難しくなっています。この状況を受け、外国人技能実習生の導入が積極的に進められています。実習生は、土木や建築作業などの現場で即戦力となり、企業にとって大きな助けとなることが期待されています。
建設業界の市場特性と技能実習生受け入れの理由
建設業界の市場規模は、都市部を中心とした再開発事業や、インフラ整備、災害復旧、高齢者向け住宅関連などの要因により、建設投資額は増加傾向が続いています。
その一方、以前の記事「ホテル・旅館における技能実習生受け入れのメリットと課題」でもご紹介しましたが、建設業の人手不足割合は非常に高くなっており、ビジネス転換や労働力の確保が非常に重要になっております。それもあり、建設業で働く海外人材はここ10年で約9倍の増加率を記録しており、その6割が技能実習生です。
建設業における受け入れ課題と解決策
1. 教育の対応
建設現場での「背中を見て覚えろ」という教育スタイルは、特に外国籍の技能実習生にとって大きなハードルとなる可能性があります。言語や文化の違いにより、指示の理解が困難になり、安全面にも影響を与えることがあります。このような問題を防ぐためには、日本語教育や多言語対応の指導、安全に対する徹底した教育が必要です。また、文化的な違いに対する理解を深めた指導方法を採用することで、失踪といった最悪の事態を防ぐことも期待できます。
2. 失踪問題への対応
建設業界では、技能実習生の失踪が特に大きな問題となっています。
以下は出入国在留監理庁の『建設および農業関係職種における技能実習生の失踪者の発生状況と対応』(令和5年)です。
建設関係の失踪者数の割合が圧倒的に多く、大きな課題となっていることが見て取れます。
過酷な労働環境や長時間労働、不当な賃金などが失踪の要因として挙げられています。これに対しては、適正な労働環境の提供が最も重要です。
企業は労働条件の見直しや適正な待遇を実施し、管理団体は定期的な面談を通じて実習生のメンタルヘルスケアを行うことで、失踪リスクを減少させることができます。
まとめ
将来の建設業界では、若者の建設業界への進出が減少し、人材不足がさらに深刻化することが予想されます。特に、日本人の優秀な施工管理技士が海外に進出する一方で、不法就労者の取り締まりが強化されるため、現場作業員も減少します。このような背景の中、技能実習制度は建設業界にとって大きな可能性を秘めています。
失踪等の課題を乗り越えるためには、監理団体と企業が連携し、実習生が円滑に業務を行えるようしっかりとサポートすることが重要です。