技能実習生の日本語レベルは?受入企業の教育方法は?

技能実習生の日本語レベルは?受入企業の教育方法は?

はじめに

日本において、多くの企業が技能実習生を受け入れています。技能実習制度は、日本の技術や知識を外国人に伝えるだけでなく、彼らの母国での経済発展にも寄与しています。

しかし、技能実習生が日本で働く中で直面する課題の一つに、日本語の壁があります。日本語を効果的に習得することは、彼らがスムーズに業務を遂行し、職場でのコミュニケーションを円滑にするために非常に重要です。本記事では、技能実習生の日本語力を向上させるために企業ができる具体的な方法について紹介します。

日本語能力試験(JLPT)

技能実習生の日本語レベルは日本語能力試験(JLPT)に基づく5段階評価(N1~N5)で判断されることが多いです。N1が最も難易度が高く、日本人でも考えさせられるような問題が出題されます。

  • N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
  • N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
  • N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
  • N4:基本的な日本語を理解することができる
  • N5:基本的な日本語をある程度理解することができる

技能実習生は、来日前に6ヶ月ほど日本語を学習することが一般的で、N4~N5レベルの学生が多いと言えるでしょう。

日本語ができる人・できない人の差が大きい理由

個人の学習意欲と能力

言語習得には個人の学習意欲や言語習得能力も大きく関与します。自己学習が得意な実習生や言語のセンスがある実習生は短期間で上達することが多いですが、そうでない場合は時間がかかることがあります。

現地日本語学校の教育の質

在籍している教師の教育能力や、送り出し機関や日本語学校自身の日本語教育に対する意欲が大きく異なります。教科書通りの基本的な教育しか実施しない学校も多いですが、受け入れ先の業務内容に合わせた授業を実施する学校もあります。例えば、仕事現場で使用する実用的な日本語を暗記させ、入国後にスムーズに仕事ができるよう準備しています。

また、監理団体が送り出し機関としっかりと連携し、実践的な教育をサポートすることで、実習生の日本語力は大きく向上します。例えば、現場で使う言葉を付けた単語帳を使用するなど、実践的な教育を行うことで実習生はより実用的な日本語を習得することができます。

企業のサポート体制

日本に来てからのサポート体制も重要です。実習先が日本語学習に対して積極的な支援を行っている場合、実習生の日本語力は向上しやすいです。例えば、日本語を教える機会を設けたり、日本語資格の受験費用負担等のサポートがあると、結果的に仕事での貢献度アップにつながります。一方で、サポートが少ない場合は、実習生が日本語を習得するのに困難を感じることがあります。

特に、技能実習制度が廃止され、新しく始まるとされている「育成就労制度」では、日本語の観点は非常に重要視されるようです。

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受入企業ができること

技能実習生の日本語力を効果的に向上させるためには、受け入れ企業のサポートが欠かせません。以下に、企業が取り組むべき具体的な方法を紹介します。

1. 日本人が日本語で指導する

技能実習生が日本語を上達しにくい一因として、母国語が通じる先輩の技能実習生に頼ることが挙げられます。仕事でわからないことがあると、母国語が通じる先輩に尋ねるため、日本語を使う機会が少なくなり、日本語力の向上が遅れてしまいます。そこで、技能実習生の指導はできる限り日本人が行うようにすることで、日本語に触れる機会が増え、日本語の上達が促進されます。

2. ランチタイムを活用する

学習だけでなく、会話を通じて日本語を習得することが非常に効果的です。日本人の従業員と共にランチをする機会を定期的に設けることで、業務以外の言葉を使ったコミュニケーションが増え、自然な形で日本語力を向上させることができます。リラックスした雰囲気での会話は、実習生にとっても学びやすい環境を提供します。

3. 日本の文化や習慣を教える

技能実習生は日本の文化や習慣についてあまり知らないため、戸惑うことが多いです。企業が積極的に文化や習慣を教えることで、実習生は職場の人々と関わりやすくなり、日本語で話す機会が増えます。ちょっとした旅行やイベントを通じて日本の文化を学ぶ機会を提供することも、実習生の日本語力向上に役立ちます。

4. 仕事中は日本語のメモを取らせる

実習生がわからない言葉や初めて聞く単語があったときに、発音と意味をメモして覚えるように伝えることは非常に効果的です。日本人の私たちも新しい仕事の手順や単語をメモすることで忘れずに済むのと同じように、実習生にもメモを取る習慣をつけさせることが重要です。メモを取ることで、ひとつひとつ確実に日本語を覚えることができ、長期的には仕事のスピードも向上します。

5. 簡単な日本語で話しかける

実習生には、なるべく簡単な日本語で話しかけるようにしましょう。理解できないときは、簡単な日本語に言い換えたり、一文一文を短く区切って指示するなど、臨機応変に対応することが重要です。「破損する」は「こわれる」、「接合する」は「つける」など、子どもでも理解できるような日本語に言い換えることが効果的です。また、「この荷物を2階に運んで中身を出して箱をつぶしてください。」という長い指示は、「この荷物を2階に運びます。中身を出します。箱をつぶします。」と区切って伝えることで、実習生が混乱することを防げます。

6. 質問を促す環境を作る

実習生がわからない時に「わかりません。教えてください」と質問できる環境を作ることが大切です。技能実習生の中には、わからないことでも「わかりました」と言ってしまうことがよくあります。そのため、実習生が理解できていないと感じたら、「わかりません」と言ってもいいと伝え、質問を促すようにしましょう。実習生がわからないことを言っても怒らないことが、信頼関係を築く上で非常に重要です。

7. 理解度を確認する

実習生が「わかりました」と言ったことが実は分かっていない場合、仕事での失敗につながることがあります。勉強中や仕事中に「わかりましたか?」と尋ねる代わりに、「〇〇は例えばどんな時に使いますか?」と具体的な質問をして、本当に理解しているかを確認しましょう。また、実習生が「わかりません」と答えた時には、「わかりませんと言ってくれてありがとう」と伝えることで、わからないことを素直に言える環境を作ることが大切です。

これらの取り組みを実施することで、技能実習生の日本語力は確実に向上します。企業が積極的にサポートすることで、実習生が職場でのコミュニケーションを円滑にし、業務効率の向上にもつながります。

まとめ

技能実習生の日本語力向上は、彼ら自身の成長と職場での適応力向上に直結します。企業が積極的にサポートすることで、技能実習生はより自信を持って業務に取り組むことができ、結果として企業全体の生産性も向上するでしょう。今回紹介した方法を参考にし、技能実習生が安心して働ける環境づくりを進めていただければと思います。皆さまのご協力とご支援が、技能実習生の成功に繋がることを心から願っています。