技能実習生と特定技能、違いは?どちらがおすすめ?

技能実習生と特定技能、どちらがおすすめ?

はじめに

日本では、技能実習制度と特定技能制度という二つの主要な外国人労働者受け入れ制度が存在します。これらの制度は、社会貢献を第一の目的としながらも、日本の労働市場における人手不足を補う重要な役割を果たしていますが、企業側は適切な制度選びにしばしば悩まされます。この記事では、それぞれの制度の基本的な違いと、考慮すべき主要な要素を詳細に説明します。

※今後は、技能実習制度が廃止され、新しい制度「育成就労」に移行予定です。

技能実習制度廃止?育成就労制度とは?

はじめに 2024年6月14日、技能実習制度に代わる外国人材受け入れの新制度「育成就労」を新設する出入国管理法などの改正法が、参院本会議で可決・成立しました。公布後は3…

技能実習と特定技能の違い

まずはこちらのまとめをご覧ください。

技能実習特定技能
制度目的日本で培った技能や技術、知識を開発途上地域に移転し、そこでの経済発展に貢献する人材を育成すること。国内で人材を確保するのが困難な産業分野において、特定の専門知識や技能を持つ外国人を受け入れること。
期間最長5年
・技能実習1号:1年
・技能実習2号:2年
・技能実習3号:2年
無期限(※)
・特定技能1号5年
・特定技能2号無期限
(※2023年時点で、特定技能12分野のうち介護以外の11分野)
職種90職種165作業12分野14業種
作業必須作業が年間50%以上業務内容で決められた範囲の業務は満遍なく行う
給与最低賃金以上日本人と同等以上
転職原則不可特定技能で可能な分野であれば可

それでは、それぞれ詳細をご説明していきます。

技能実習制度とは

制度の目的

技能実習制度は、国際貢献を目的として、発展途上国からの若者に対して日本の高度な技術や知識を伝授し、彼らが母国での職業生活を豊かにするためのスキルを習得できるよう設計されています。この制度は、日本の企業と実習生双方にメリットを提供することを意図しています。

期間・職種

この制度は1号から3号に分かれ、最長5年間の実習が可能です。実習生は段階的に技術を習得し、帰国後にその知識を活用することが期待されます。

2023年12月時点で、技能実習2号移行対象職種は90職種165作業、3号移行対象職種は81職種146作業となっています。職種だけでなく、作業の種類が重要になってくるため、監理団体と現場を把握し要件の適合性を確認することが好ましいでしょう。

技能実習制度では、各業種ごとに具体的な作業内容が細かく定められており、これは技能実習生が高度な技術を習得することを目的としています。作業内容の厳格な規定は、異なる言語環境で技術レベルが初級の実習生が単純労働に従事することを防ぎ、実質的な技術向上を支援するために設けられています。必須作業の割合は年間50%以上が求められています。

給与

技能実習制度における給与は、実習生が日本で学ぶ間、彼らの生活を支えるための最低限の保証がされていますが、この給与は日本の最低賃金法に基づいて支払われるため、地域によって異なる場合があります。技能実習制度は主に教育と国際貢献を目的としており、実習生が日本の技術を学び、帰国後にその技術を活用することが期待されています。

実習生の給与については別の記事をご参考ください。

最低賃金?技能実習生の給与相場はいくら?

はじめに 技能実習生の給与は、受入企業にとっても技能実習生にとっても重要な問題です。特に、2024年7月現在では大幅な円安が進み、日本ではなく韓国やドイツ、オースト…

転職

技能実習制度では、原則として転職は許可されていません。これは、技能実習生が既に本国で関連する職種で働いており、日本で更なる専門技術を習得することを目的としているためです。

ただし、実習先が経営破綻するなど特別な事情が発生した場合、または技能実習2号から3号への移行時には、転籍が認められます。しかし、上記の理由から、職種や作業内容を変更することは許されません。

特定技能制度とは

制度の目的

特定技能制度は、日本国内の労働力不足が顕著な分野において、即戦力となる外国人労働者を受け入れることを目的としています。この制度では、一定レベル以上の技能を持つ人材が対象で、特定の職種でのみ働くことができます。

期間・職種

この制度は特定技能1号と2号に分類され、1号は5年間、2号は在留期限を更新し続けることができれば無期限に滞在更新が可能です。受け入れる業種は14業種に及び、労働者は日本の労働基準に基づいた適切な待遇を受けます。また、特定技能労働者は、家族の帯同も認められる場合があります。

特定技能制度は人手不足を解消することを目的としており、必要に応じて単純労働を行うことも許可されていますが、これは主に付随する業務として認められる範囲です。特定技能労働者は高度な技能を持つ即戦力として位置付けられているため、彼らの主たる業務が単純労働だけであってはなりません。

給与

特定技能制度では、外国人労働者が即戦力として働くため、彼らの給与は一般的に技能実習生よりも高めに設定されることが多いです。特定技能労働者の給与は、同じ職種で働く日本人労働者と同等またはそれ以上であることが法的に要求されており、より高い技能を反映した適正な報酬が保証されています。

特定技能制度は、国内の労働力不足を補うため、すぐに業務に貢献できる高度な技能を持つ労働者を対象としています。このため、特定技能労働者の給与条件はより競争力のあるものとなっています。

転職

特定技能制度においては、労働者の転職が可能ですが、これは制度の柔軟性を反映しています。特定技能労働者は、職場環境やより良い雇用条件を求めて自由に転職することが許可されています。ただし、転職は同一の特定技能の範囲内である必要があり、新しい雇用主も適切な許可を持っていることが必要です。この規定は、労働者が安定した就労環境を求め、自身の技能を活かしながらキャリアを築くことを支援するために設けられています。

また、技能実習から特定技能に移行するタイミングでの転職も可能です。技能実習の期間が終了し、技能検定3級または技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格することが特定技能への移行条件となります。そのため、実習先や監理団体との間で慎重なスケジュール調整が求められます。

企業が考慮すべき点

企業はこれらの制度を利用する際に、長期的な人材計画、運用コスト、労働者の技能レベルと法的要件を総合的に評価する必要があります。また、適切な監理団体との連携を通じて、受け入れと管理を効果的に行うことが重要です。

以下に、それぞれのメリット・デメリットを記載します。

技能実習特定技能
メリット人材確保が比較的容易
求人情報やお仕事の魅力次第ですが、国籍や性別を指定して募集が可能です。

計画的な受入
事前に人員計画を立て、長期にわたる運用が可能です。

長期就労の安定性
実習生は基本的に3年間は同じ企業で就労を続けるため、人材の安定供給が見込めます。
日本語能力が高い
多くの特定技能労働者は、基本的な日本語コミュニケーションが可能であり、すぐに業務に取り組むことができます。

即戦力として活躍可能
就労経験があり、業務にすぐに貢献する可能性が高いです。
デメリット配属までの時間
実習生の受け入れまで最短で7カ月かかります。

教育に要する時間
実習内容の教育には多くの時間を要することがあります。

日本語習得の遅れ
実習生が日本語を習得するまでに時間がかかることがあります。
候補者の母数が少ない
高い技能と日本語要求により、適合する候補者を見つけるのが難しい場合があります。

試験の機会が限定的
特定技能の試験は海外での開催が限られており、時と場所に制約があります。

配属時期の不確実性
国内転籍時に適切なタイミングでの配属が難しい場合があります。

早期退職のリスク
新しい環境への適応がうまくいかず、期待より早く退職する可能性があります。

まとめ

現在、これらの制度を取り巻く環境はどんどん変化しており、制度改正も実施される予定です。

本記事では、2024年3月時点での、技能実習と特定技能の各々の特徴の違いを比較しながら説明してきましたが、もし自社にどちらの制度が合っているのか選ぶのが難しいと感じた場合は、ぜひ私たちにお問い合わせください。最新情報や実績に基づくアドバイスをさせていただければと思っております。