技能実習生の試験「技能検定」とは?合格率を高めるには?
はじめに
技能実習生にとって重要なステップである「技能検定」について、詳しく解説します。技能検定は、実習の成果を客観的に評価するための試験であり、技能実習生が技術を証明する手段です。
企業は、技能実習生を受入後、「技能検定」に向けて準備を進めなければなりません。もし不合格になってしまうと強制帰国の可能性があります。
本記事では、技能検定とは何か、その種類や等級区分、受験スケジュール、試験の流れ、合格率を高める方法について詳しく説明します。
技能検定の概要
技能検定とは?
技能検定は、技能実習生が学んだ技術や知識を評価するための国家試験です。
この試験は、実習生が実際の業務でどれだけ技術を習得したかを測るものであり、合格することでその技術が証明されます。技能検定は、技能実習生にとってキャリアを築く上で重要な資格となります。
技能検定の等級は?
技能実習生向けの技能検定は、 基礎級、随時3級、2級 の3つの階級があります。
それぞれの定義を表にまとめました。
基礎級 | 基本的な業務を遂行するために必要な基礎的な技能及びこれに関する知識の程度 |
随時3級 | 初級の技能労働者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度 |
随時2級 | 中級の技能労働者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度 |
技能検定の目的は?
技能実習生を受け入れる際に作成する技能実習計画には、技能検定の合格が目的として定められます。
最大5年間の技能実習期間ですが、下記のように移行のために合格しなければならない基準があります。
- 技能実習1号から技能実習2号への移行:基礎級の技能検定の合格が必須
- 技能実習2号から技能実習3号へ移行:随時3級試験の合格が必須
技能実習1号の技能実習生が、基礎級の試験に合格できなかった場合には、強制帰国になってしまいます。受入企業は監理団体と協力しながら、合格に向けた準備を進めていく必要があります。
試験内容
職種別の最新の試験内容は、厚労省のホームページにて確認できます。
参考:厚生労働省 技能実習生等向け技能検定の概要
技能検定の合格率
令和4年度データでは、基礎級試験の合格率は約90%と、高い合格率になっていますが、随時3級試験になると約25%の低い合格率になっています。
2級の合格率は2%というとても低い合格率になっており、日本人でも合格が難しいと言われています。
等級 | 受験者申請者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
基礎級 | 54,727人 | 47,603人 | 87.0% |
随時3級 | 54,135人 | 14,539人 | 26.9% |
随時2級 | 12,419人 | 233人 | 1.9% |
技能検定のスケジュール
技能検定の受験スケジュール
そもそも、技能実習の在留資格更新には、技能検定の合格証明書の提出が必要です。
そのためには、技能実習2号へ更新する際には、技能実習1号が修了する6か月前までに技能検定基礎級の申込をしなければ間に合いません。
また、技能実習3号へ更新する際には、技能実習2号が修了する12か月前までに随時3級を申し込むようにしましょう。
技能検定実施日は、試験実施期間によって決められているため、受験日の指定はできません。余裕をもった受験スケジュールを検討してください。
技能検定基礎級試験が不合格になれば、在留資格を更新できず、強制的に帰国になってしまいます。
随時3級の結果は合格でも不合格でも問題ありませんが、技能実習3号(4〜5年目)への移行を希望する技能実習生は、合格が必要です。
万が一、試験が不合格となった場合、1回に限り再試験が可能です。その際には、改めて再試験の調整が必要です。
技能検定の申込の流れ
まず、監理団体と実習実施者(受入企業)で役割分担があります。
技能検定の申し込み手続きや当日の試験会場への引率は監理団体が行います。
実習実施者がやることは、技能実習生への指導や受験日の調整がメインです。
- 事前申し込み
監理団体から技能検定の申し込みをすると、試験実施機関から監理団体に対して、技能検定の申請書・実技試験の問題・試験要項・受験票等の必要書類を送付します。
監理団体から実習実施者へ資料を共有しますので、実習実施者が技能実習生に指導を行ってください。
監理団体が書類に必要事項を記入し、試験実施機関へ申請書等を返送すると、試験実施機関から監理団体へ、受験会場や受験日等の詳細について連絡が届きます。
- 技能検定試験当日〜結果発表
試験会場までは、監理団体が技能実習生を引率します。
試験終了後、約1週間程度で、試験実施機関から監理団体へ合否連絡があり、合格通知書が送付されます。
合格率を高める方法
先ほど、実習実施者(受入企業)が技能実習生の技能検定合格に向けた指導を行う必要があると述べました。しかし、何をすれば良いのか、どのような指導をする必要があるのか、初めての方はわからないと思います。
まずは、監理団体のサポートを受けながら、皆様がこれまでの人生で経験されてきたのと同じように、試験対策をすることが重要です。勉強会を実施し、特に、過去問を中心に対策を打っていくことが大切です。
さらに大切なのが、日々の実習での指導です。大きく2つあります。
- 「日々の実習で、必須作業の割合を高くすること」
- 「日々の実習で、日本語を使わなければならない環境を作ること」
この2点が非常に重要です。
技能検定に合格するための最も効果的な方法は、日々の実習で必須作業の割合を増やすことです。技能検定の実技試験は、実習で行う必須作業に基づいているため、これを日常的に繰り返すことで自然と技術が身に付きます。こうして「体で覚えた技術」は、技能実習制度の目的にも沿っており、技能検定の試験対策としても最も効率的です。
さらに、筆記試験には日本語能力が必要です。これを高めるためには、職場の公用語を日本語にし、実習生が日常的に日本語を使用する環境を作ることが大切です。実習生同士や日本人スタッフとの日本語でのコミュニケーションを促進し、業務外でも日本語に触れる機会を増やしましょう。
実習実施者(受入企業)ができる日本語の教育方法は、下記の記事で紹介しています。
まとめ
技能検定は、技能実習生が自らの技術を証明するための重要な試験です。計画的な学習と実技の練習を通じて、合格を目指しましょう。技能検定に合格することで、技能実習生は技術者としての信頼性を高め、将来のキャリアに大きく貢献することができます。
日々の実習で必須作業をしっかりと行い、日本語でのコミュニケーションを積極的に取り入れることで、技能検定に無理なく合格できる可能性が高まります。技能実習生のモチベーションを維持しながら、効率的な技術習得と日本語能力の向上を目指しましょう。